いまいち×2

藤谷あるルゥとよゐこの悪党稼業』(HJ文庫)

 これで大賞か……第1回が『たま◇なま』で第2回が『スクランブル・ウィザード』ノベルジャパン大賞なんで結構期待してたんだが……応募作少なかったんかねぇ。

 設定もストーリーも、ウケる王道で更にそこから外れない範囲で一ひねりしてて、細かい出来事にもいちいちきちんと理由とメカニズムの筋を通して、((ただし時間経過に関する描写がちょっとおかしい気が。148〜149頁の間に流れた時間は数時間? それとも数日以上?)) 要素要素は決して悪くはないんだが、肝心の「なぜそんなに一所懸命になるほど惹かれるのか」が伝わってこないなぁ。一応は説明台詞もあって分かりにくいわけでもないのに、なんつーか「こういうオチもの同居テーマのお話なんだからそうなるだろ」というお約束を強要されてるような。

佐藤文隆, 井元信之, 尾関章SF小説がリアルになる 量子の新時代』(朝日新書)

 サブタイトルと

絶対に破られない量子暗号、超高速計算を可能にする量子コンピューター、量子テレポーテーション、多世界…。SF小説に描かれた世界が現実になり、私たちの生活を一変させる可能性を秘めた、量子。アインシュタインも悩んだ物理の深遠と最先端を、文学や映画のイメージを借りて軽やかに、鮮やかに解説する。

という内容説明からは、石原藤夫さんの銀河旅行シリーズとか福江純さんのSFに絡めた一連の著作とか*『フリーマン・ダイソン 科学の未来を語る』や*『SF宇宙科学講座』みたいなもんを期待してたんやけどなぁ……いや、普通の入門書or科学啓蒙書として読めばどこが悪いってわけじゃないんだが、((ただし構成の制約か散漫な印象も。1〜3部でそれぞれ別の著者が別の記述法で似た話を繰り返してるような。)) はっきり言って肩すかしであった。