支倉凍砂『狼と香辛料 XIII Side Colors III』(電撃文庫)

 商売としては露骨な引き延ばし策にいささかうんざりしつつ、でも雑誌掲載の短編をきちんと拾って単行本化してくれるのは、それはそれでありがたいと言わねばならんかも。
 で、中編のほう、まさかの「犬の一人称」。長くなってきたしたまには奇をてらったかと思ったけど、読み進めてみるとこれはこれで必然だな。あとがきで作者も書いてるけど、ノーラの一人称orノーラ視点三人称では、どんなに面白いストーリーを綴っても「小説」にはならん気がする。客観的には不幸な状況を、そうだと感じつつもそういうもんだと淡々と受け入れて暮らすって、確かに中世風世界の庶民的にはむしろそのほうがリアルなんだろうけど、現代人が金を出して読む小説にはならんわな。