いまいち×2

野崎まど『[映]アムリタ』(メディアワークス文庫)

 小説の新人賞応募作で「創作の天才」を題材にするって、チャレンジャーやなぁ。もっともその対象が映画(更に要素としてはコンテと演技と編集と音楽)、つまりすべて文字メディア以外のものであるってあたりが逃げだ。天才性が感じられなくてもそれをメディアの違いのせいにできてしまう。どうせなら森田季節のように「小説の天才」を登場させその作品を作中に引用するぐらいのギャンブルをやって欲しいもんだ。

 しかし想像以上に西尾維新であった。天然vs突っ込みの会話劇((鬼愛だの繊芥だのといった、漢字による表記に依存し本来音声会話中には存在し得ない地口を使うところまで。))もさることながら、天才の天才さ加減が西尾維新だ。ついでに47ページの、“フェムト”のくだりはこの小説の中で一番よくできているところだと思いますなんぞという作者のキャラも。その意味では、新レーベル立ち上げの目玉たる受賞作としてこれを投入したMW文庫の編集部が一番チャレンジャーかも知れん。

原田宇陀児『風に乗りて歩むもの』(ガガガ文庫)

 それなりに面白い、が、エピローグの説明編のあまりの長さで大減点、だな。これだけ延々と説明パートを付けなきゃならんってのは、イコール、本文中に必要な情報を織り込んで読者に理解させる業に欠ける、といわざるを得ん。作者がゲーム畑の人だそうで、確かにゲームならこれでいいんだろうな。本編で描写されたものを別アングル・別タイミングから見る絵がスライド的にバックで流れる中、声で演技する本職さんが抑揚を付けながらこの内容を語ってエンディング、であればOKなんだろう。しかし同じことを小説でやられてもなぁ。