伊都工平『X(エクサ)の魔王 2』(MF文庫J)

 ヒロインがすでに死んでて腐敗が止まっているだけ(中略)『カルセならこうあるだろう』という姿を、魔法によって忠実に演じているにすぎないという前代未聞の状態で始まる2巻目。しかしそれ故にこそ彼女が実にヒロインらしいヒロインになってるってのが、実に意地悪な構造のお話しだ。生きてないが故に迷わず曲がらずぶれない、なので他の全キャラの支柱にして指針となる、まさにストーリーの中核が空っぽのゾンビ。よくもまぁこんな変な構成を思いつくもんだ >作者。
 で、その奇怪きわまりない構造が、アホな敵手の干渉によって希望のありそうな方向に落ちつきそうになったと思ったら、ラストに唐突に出てきた「次のボス敵」はいったい何を考えてるのやら。それにしてもとことん、彼女がヒロインにして世界の中心なのね。
 あと、帯の「移動王室(プリマ=アシエス)騎士団結成!」という煽り文句がほとんど本編に関係してこないのを不審がりながら読み終えて、あとがきでひっくり返ってしまった。確かにストーリーの流れを簡単にまとめるとその通りだわ。

Xの魔王 2 (MF文庫J)

Xの魔王 2 (MF文庫J)